「太ったのは誰のせい?」

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2年半前、ある知人にダイエットを始めたと報告を受けた。その頃、特にダイエットに関するトピックに注目していたわけではなかったが、脳の研究をしていると健康であることの重要性を思い知らされることが多かった。特に力になりたいと強く思った訳でもなかったが、「糖質制限、脂質制限、豆腐ダイエット、チョコレートダイエット、サプリ。。」巷にはダイエットに関する情報が多すぎて何が正しいかわからない」と言われた。「いや、そこじゃないだろ。。」と思ってしまったところから全ては始まってしまった。痩せたいけども痩せ方がわからない人は多いのかも?と。疑問が湧いたことで答えを確かめたい衝動で今まで過ごしてきた。その結果、リバウンド対策に特化したダイエットプログラムを立ち上げるに至るのだが、その中で最も重要だったと言える問いについて今日は書いておきたいと思う。それは「その知人の体重が増えた原因」について。言い換えると「肥満は自己責任なのか?それともそうじゃないのか?」ということだ。これを理解しておくことで体重を落としたいと願う人の、ストレスが軽減しダイエットを通して自分と向き合うことに少しでもリラックスして取り組んでもらえること、それと社会や周囲の人たちからの体型を気にしている人に対する視線が少しでも変化することを願っている。

まずは、一般的になぜ体重が増えるのか?それはカロリーを摂取しすぎているからだ。つまりオーバーカロリーな状態。少し説明するとオーバーカロリーとは日々消費するカロリーよりも、体内に入ってくる摂取カロリーが多い状態のことをいう。その溢れた分だけ体重は増える。(勘違いはしてほしくないのは、だからと言ってとにかくカロリーを減らせば良いと言う訳ではないはない。その点は別途記載するようにします。)では、その彼はなぜオーバーカロリーになったのか?原因を取り除かなければ根本的な解決にはならない。まずは原因を特定しようと思った。

彼の体型の原因にクローズアップする前に、世間一般のことを取り上げておきたい。ご存知の方も多いとは思うが、世界全体で肥満は増加傾向にある。細かい数字などは調べていただければいくらでも出てくるのでここのでは割愛する。わかりやすく言うと昔よりも食料が簡単に手に入るようになったことで、人類は食べることに困らなくなった。その分、肥満が増えた。この時点でお気づきの方も少なくないと思うが、昔よりも太りやすい世界で私たちは生きている。とはいえ、体や脳の設計図である遺伝子は昔から引き継いできているため、現代の食糧の流通量と私たちの遺伝子がマッチしているとは言いがたい。経済発展によりいつでもどこでも食糧が手に入る世界で生きている私たちは、食べられないリスクよりも、食べすぎるリスクを抱えながら生きている。しかも高カロリーな炭水化物は手に入りやすい。おにぎり、パン、カップラーメンなど手軽に手に入る食料は比較的安くお腹を満たせる。同じような満足感をお肉や野菜で得ようと思うと、値段が高くなるのは直観的にわかって頂けると思う。つまり私たちは太りやすい食べ物ほど手に入りやすい世界に生きているし、そういう世界を作ってきたとも言える。では、隣の誰かが太っているのは誰のせいだろう?「いやいや、同じ世界で生きているが俺は太ってないぞ!」と言うかたもおられると思うので、ここからは個人に焦点を当ててみたいと思う。

ここからが本題。私にダイエットを始めてたと報告してきた彼の体重が増えた原因を特定するために彼に幾つかの質問をした。まずはいつから体重が増えたのか?子どもの頃から太り気味だったとのこと。高校生の頃には80kgに近づき(身長は170cm程度なので既に過体重)、29歳の頃には94kg程度になっていた。子どもの頃、どんな食生活だっとのか聞いてみると毎晩唐揚げを食べていたとのこと。毎晩、揚げ物を作るお母さん、ある意味手間がすごくない?と問うと、いろんな調理をするくらいなら揚げるだけの方が楽だったそう。あなたにも想像してほしいのだが、物心がつく前から毎晩食卓に唐揚げが並ぶ食卓で、あなたは健康な食習慣を維持できるだろうか?私は正直そんな自信は全くない。むしろ、バランスの良い食事や健康的な食事がどんなものなのかわかりっこない。だってそれを知る機会さえないのだから。例えるなら、日本語を話す両親に育てられ、自分だけ英語を覚えろと言われているようなものだ。だから、自分で気づいた頃には既にぽっちゃりしていたはずだ。「いや、だったら気づいて頃に改めればよかったじゃないか!」確かにその通りだ。大人になると他の家庭の食生活や、友達や同僚が毎日何をどのくらい食べているのかを知る機会はたくさんある。しかし、ことはそう単純ではない。英語を学んだ方がいいとわかっていても、習得できていない人がどれほどいるか考えてみてほしい。きっと納得せざるをえないだろう。それくらい人は誘惑に抗えない。しかも、食事の量をコントロールした方が良いと気づいたからと言って体質というのは一朝一夕では変わらない(正しくは、少しづつ確実に変化している。彼も1年で20kg痩せた)。幼い頃からつみかさねた食事によって彼の身体中の細胞は出来上がった。腸内環境は荒れ、高脂質、高炭水化物の影響で血管や内臓に負荷がかかっていたことは想像に難くない。こうなると、体から発せられる満腹中枢やそれに関連するホルモンは正常に機能しなくなる。衝動性と肥満に相関があるのも納得していただけるのではないかと思う。ダイエットを始めた頃の彼は便秘と不眠症が辛そうだった。大人になって気づいた頃には既にその状態ということだ。物心がつく前から日本語でコミュニケーションが取れるように、自然と栄養が偏り体重が増えていったということ。さらに、食事に関する記憶さえも脳の神経細胞に色濃く残る。何が美味しいか。自分がどれくらい食べれば満足するか。どこに行けばどんな食材が手に入り、何が自分の食欲を満たしてくれるか。彼が「一日中食べ物のことを考えていた。」と言っていたことからもよくわかる。

食事以外でも、幼い頃の環境は発育に大きな影響を与えることは誰もが想像に難くないはず。音楽、スポーツ、親との関係。これらが未来に与える以上に、食事がもたらす影響は大きいのではないかと思う。「だって、体は食べたものでできるのだから!」その証拠にぽっちゃり体型で悩むある女性も「子どもの頃は晩ごはんといえばびっくりドンキーだった」と幼い頃から毎晩外食だったことを告白してくれた。

人の発育のプロセスや現在の社会環境を考えると、「肥満は自己責任」とは決して言えないと思えてくる。遺伝子レベルの研究を見ても、その確信は深まる一方だ。だから痩せたいと願う人はぜひ自分を責めることは、勇気を持って一度やめてみてほしい。自分と向き合いダイエットに取り組むためには、自己否定は邪魔になる。今の自分の状況を観察し、環境を変えたり、少しづつ食べるものの選択を変えていけば確実に体は変化していく。
「だって、体は食べたものでできるのだから」

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